名の意味は「友人」とされる。その存在はアーリア人が散開する前の時代にまで遡ることができる。ミスラはその頃「契約」を意味する名であったようだ。千の耳と万の目を駆使して世界を監視し、死後の裁判を司るという。牧畜の守護神としても崇められた。

ミスラは12月25日、つまりキリストの生誕日と同日に生まれたという。これは偶然の一致では無い。そもそも、拝火教でのミスラは天使(ヤザタ)の長であった。ミスラは魔を討ち滅ぼす光明の軍神として、天界の争乱の時には善神アフラ・マズダの右腕として、最凶・最悪の悪魔アンリ・マンユの手から世界の破滅をくい止める役を担っていたのだ。

そして、歴史は進みローマ帝国の時代になると、ミスラはギリシャ世界で太陽神ミトラス/Mithrasとなり、彼を神と崇める密議宗教「ミトラス教」が生まれた。この宗教は「死後の世界の保証」を与えた事から、常に死と隣り合わせの兵士や船乗りの間で急速に広まり、成立間もないキリスト教にとって最大の脅威となっていく。ミトラス教とキリスト教、この二つの宗教には数多くの類似点があった。だが、ミトラス教は他宗教の神も認めていた事が原因で、ローマ帝国末期にキリスト教へ大量の改宗者を出し衰退していった。

ミスラの誕生日=12月25日は、太陽神を崇めるミトラス教信者にとって冬至を祝う重要な日であったという。しかし、古代のキリスト教徒たちは、誰も正確なイエスの誕生日を知らなかった事を逆手に利用したようだ。彼らキリスト教徒は自らの権威を誇示する為に、ミスラの誕生日をキリストの誕生日と定め、他教徒が盛大な祝宴を開く日を自分たちの祝祭の日としたのである。

ミスラ/Mithra