「王国」「統治」「主権」を意味するクシャスラは、アムシャ・スプンタにおいては第五位の男性の大天使である。全ての鉱物と金属の支配者であり、鉱物界を司る。終末の時には溶鉱の火となり人々の善悪を審判し、善神アフラ・マズダの「正義の王国」の完成に寄与する。

国家の統率力を象徴するクシャスラは、地上においては威厳に満ちた神の力そのものの権力の化身として、人々の融和を図り、秩序あるより善き国家の完成を目指すという。これはクシャスラと争う「無秩序」の背徳を担うダエーワ:サルワ/Saurvaに対抗するものである。

また、第四の三千年期、終末の「最後の審判」が行われる時に、クシャスラは「灼熱の溶鉱の火」として現生するという。その業火は善人と悪人とを分別させる世界を浄化する炎である。善人にとっては温めたミルク程度の熱にしか感じないその炎も、悪人にとっては溶鉱の火そのものの熱さとなって襲いかかるのだ。人間はこの灼熱の審判を乗り越えねば、神の裁判を受けることを許されない。つまり、溶鉱の火とは「浄化」の象徴であり、このような審判の様式は、後のユダヤ・キリスト教、イスラム教へと多大な影響を与えている。

ソロアスター教では空は「宝石の塊が輝きを放ち形成される」と認識されていた。クシャスラは鉱物(宝石含む)を司ることから、彼は空や石に関わる神霊、天使と深い親交があったようだ。また鉱物は大地から採掘されるもの。そのため所謂山師達はクシャスラに信仰を捧げていたという。鉱物の支配者クシャスラは、埋もれた富に関わる代物全ての場所を、当然知り尽くしているのだ。

クシャスラ/Khshathra